四話
奴隷二人を囲っている生活を続けていた俺だがその内に周囲から厄介事の類が迷い込むようになってきた。
何せ特に取り柄がなさそうな男が、定期的に大金を仕入れてくるのだ。
しかも金を手に入れるルートは誰にも解らない。
そうなると不思議なもので、普段はただの平凡な男にしか見えない俺にも、貫禄があるように見えるらしい。
それどころか実は凄腕などというあらぬ噂まで立つ。
かくして面倒事が俺に相談されたりする状況になるわけだ。
朝食を取っていた俺は、レイラから受けた報告にフォークを止めた。
「カンダール商会からの依頼?」
「はい。先ほどの朝方、緊急の依頼があるということで、先方の使用人が来られました。まだ早い時間帯であるのでお引き取りを願いましたが、それならば昼ごろまた来ると仰られまして」
「……俺は便利屋になったつもりはないんだが」
「私もそう受け答えをしたのですが、奴隷では話にならないため、直接話をさせてもらうと」
「ふーん。あ、レイラ、肉、もう一枚」
お代わりを頼みながら、少し考える。
カンダール商会と言えば、医薬品や日常で使う消耗品を手掛けている商会だったはずだ。
何度か貴重な薬草を売りつけたことがあるから、覚えている。
「依頼って何だと思う?」
横に座っているアリーシェに尋ねる。食事の時は、俺は横にアリーシェを座らせるのが常だった。
時々、食べるのも面倒な時にあーんしてもらうのが理由である。
飲むのが面倒な時に、口うつししてもらうパターンはあまりない。
「カンダール商会については存じ上げていないので、詳しくは分かりませんが、ご主人様が下ろしたことのある物品で至急入手したいものがあるのではないでしょうか」
「まあ、普通に考えたらそうか」
俺はそこで考えるのをやめて、食事に専念した。
めんどくさくなったので、フォークをアリーシェに持たせる。それだけでテーブルに倒れ込んだ俺に、アリーシェは餌を運んでくれる。
「野菜だ。野菜くれ」
「はい。緑と赤、どちらがいいですか?」
「赤」
「分かりました。お口を開けてくださいね、ご主人様」
「あーん」
などとまあ、今日も俺の一日が始まるわけであった。
「で、何の用だ。前置きなしで頼む」
「――金貨で二百用意しました。マンガブーの根を一週間以内に卸していただけないでしょうか」
昼ごろにやってきた商会の使いは、単刀直入に用件を切り出してくれた。
マンガブーというのはマンドラゴラの親戚のような植物であり、非常にレア。
貴重な薬品の原料にも使われると聞いたことがあるが。
「何で俺に依頼するわけ? そんなん扱ったことないんだけど」
「首都全ての卸業者に打診しましたが、この時期のマンガブーは竜の住まう山脈まで向かわなければならないため、どこも仕入れていないということでした。そこで最早、高名なセイイチロウ様に頼るしかないと判断した次第です」
「んなこと言われてもさ。無理だって。俺そんなん手に入れたことないんだもん」
俺があっさりと無理だと告げると、使者は椅子から降りて即座に土下座した。
額を床にこすりつけて懇願する。
「申し訳ございません! 金貨で三百、いや三百五十出させてもらいます! ですから、王宮とも通じるセイイチロウ様のお力添えを!」
どうやら俺が金の問題で渋っていると思っているらしい。
しかも王宮と通じているとかどういうことだ。貴族と俺が組んでいるという荒唐無稽な噂なら聞いたことがあったが、王さまと関係あるなんて話は初耳だった。
困ってアリーシェに視線を向けると、何の事だか解らないのか首を横にふられた。
俺も何が何だか解らない。
「あー、何でそんなにマンガブーが欲しいわけ? 取りあえず、座りなよ。んなことされたらこっちも居心地悪いし」
「これは失礼を、申し訳ありませんっ」
俺がそう言うと、使者は素早く椅子に座りなおした。
そして依頼の事情について語り始める。
「ことは我が商会の会長のお孫さまであられるクラウス様が、高熱を出して倒れたことから始まりました――」
そこまで使者が言ったところで俺は大体の事情を察した。
「つまりその病気は原因不明の病か何かで、治すためにマンガブーが必要だと」
「おおっ、さすがはセイイチロウ様! そこまで既にご存じでしたか!」
「いやまあ知らんかったけど流れ的に、っていうか、竜の住む山脈って言ったら、この近くだとヨルムン山脈だろ? 往復で四日半かかるじゃんか。つまり実質二日でマンガブー取れとか無謀な。しかも今は竜の繁殖期」
「……繁殖期の竜の存在はどの卸業者も頭を悩ませているらしく、どれだけ報酬を積もうとも、動こうとはしないのです」
「そりゃ正常な判断だな」
興奮状態の竜を殺すには、勇者の力を使った俺でも一、二分は必要だ。
それがうじゃうじゃ襲いかかってきたら、制限時間を超えてしまうかもしれない。
「どうか、どうかお願いいたします!」
「そんな頭下げられてもね。無理なもんは無理というか」
「しかし、セイイチロウ様は先月、ヨルムン山脈にて竜の鱗を採取してこられたと聞いております!」
「実際行ったから割に合わないって分かるんだよ。しかもマンガブーの生息地帯とか俺知らないし。竜みたいに向こうからやって来るわけじゃないんだろ? だったら時間が尚更時間がかかる。それなのに二日しか動けないんじゃ、確約できるわけねーよ」
渋る俺。気分はもう寝室にこもって惰眠をむさぼりたかった。
にも関わらず若い使者は空気を読まずに、俺にかじりついてくる。
何と面倒な男。
そんなことを考えていたら、さらに我が家に訪問者が現れたらしい。
「マスター。カンダール商会長が、直接当家に来られました」
「はあ?」
「ですから使者などではなく、会長本人が、こちらへ」
「何でまたそんな大物が……。連れて来い。あとアリーシェ。ちょっと部屋に下がってろ」
なんという空気の読めない商会だろうか。
トップが来られると、真面目に対応せざるを得ない。
しかもカンダール商会の会長は商人ギルドにも影響力を持っているようであり、俺の今後の生活を左右するだけの力を持っているかもしれない相手なのだった。
超めんどくせえ。
「君が、流通の魔術師と呼び名高い、セイイチロウ・ゴウダ君だな。私はリチャード・ネルソン。カンダール商会の会長を務めている」
「どうも。セイイチロウ・ゴウダです。ま、座ってください」
「失礼する。それで依頼だが受けてもらえないだろうか」
「聞かせてもらいましたが、竜と正面から喧嘩するかもしれない仕事はお断りさせてもらいたく。というよりも、薬品系統での依頼なら、他にも大手の、例えばロートンさんの所に頼んだ方がいいんじゃないですか? うちは個人でやってますから限界が」
「ロートンの若造にならついさっき、直接断られた。金を積まれても従業員の命には代えられんらしい」
「……ならどうして、うちに会長自ら」
「そのロートンの推薦だ。この時期のヨルムン山脈で鉱物や薬草を現地調達できる手段を持っているのは、首都マグラゴードでも君しかいないと聞いた」
そこで会長とやらは、横で縮こまっている使者に目線を向けた。
「報酬は幾らで依頼している?」
「三百五十で、お断りされました」
「馬鹿め。儂の孫の命がかかっているのだぞ。せめてその倍は設定しろ」
短く吐き捨てると、会長は俺に向きなおった。
「孫は二週間以内に適切な処置を受けなければ、死ぬかもしれないと診断を受けている。あれは初孫だ。いずれは商会を継ぐことにもなろう。金に糸目をつけるつもりはない。八百出す。どうだろうか?」
「だから金の問題ではなくて……」
純粋にめんどくさいのです。そう告げて会長を穏便に追い返そうとした。
その時、後ろからそっとレイラが耳打ちした。
「マスター。聞くところによれば、カンダール商会会長のコレクションには異界に関わるものが」
「本当か?」
「噂でしかありませんが」
と、そこで目の前の爺さんに興味がわいてきた。
異界。それはこの世界と異なる場所のことを指すが、俺はその情報を欲していた。
自分がいた世界に帰るための手がかりを探したいというのは、正常な欲求だろう。
この爺さんが本当に異界関係の代物を持っているというなら、話を真面目に聞いてもいいかもしれない。
「……何だね?」
奴隷が話を中断したこと不満を覚えたのか、眉をひそめる会長。
しかし話し合いの最中であるためか、抑えているようだ。
「小耳にはさんだのですが、会長は多くの珍しいコレクションをお持ちとか」
「それがどうした?」
「実は私、非常に今、欲しい物品がありまして。有態に言えばコレクションしている」
「何が欲しい。言いたまえ。孫の命と天秤にかけるつもりはない」
「では、異界に関わる物品はお持ちでしょうか?」
そう切り出すと会長は記憶をひっぱりだすように、天井を眺めた。
「異界? ……異界か。確か空間跳躍に関する魔導書が一冊。それと使用方法は分からないが、異界のモノというよく分からない代物ならば持っていたと思うが」
「魔導書一冊と、よく分からないものですか。拝見させてもらってもよろしいですか?」
「宝物庫はゴトーの本社にある。往復で七日はかかる場所だ。今から見に行けば、マンガブーの採取に間に合わん。後にできんか?」
実際に判別していないアイテムを報酬とするべきかどうか少しだけ俺は迷った。
「よし、こうしよう。後からやはり君の気に入らない物だったならば、別途報酬を用意する。もちろん基本料金の八百に上乗せで、だ。それで頷いてくれ」
「そうですね……お受けしましょう」
だめ押しの言葉で俺は受けることにした。
金に興味はないが、異界関係の者なら確かにそれが偽物であっても欲しかったためだ。
「ただ、条件があります。竜を撃退する方法なら心当たりがありますが、マンガブーの正確な生息地域が分かりません。それに関する情報なら、そちらで集められるでしょう」
「分かった。夕方までに用意する。移動手段も同様だ。今日中に出発してもらえるか」
「では、準備が完了したらここまで来させてください。後、護衛はこちらで雇いますので不要です」
「分かった。シュミット! 聞いていたな、急げ!」
そう言うと会長は立ち上がった。無言を貫いていた最初の使者も慌てて立ちあがる。
そのまま風のような勢いで我が家を出ていった。
「マスター、準備に関してはどのように」
「いつもの旅道具一式。それに冒険者ギルドに行って、サーラ、パメラ、テレサの三人組をいつもの条件で雇ってきてくれ。拘束期間は一週間だ」
「了解しました」
頷き一礼すると、レイラは家を出ていった。まずは冒険者ギルドへと向かうつもりだろう。
「……結局、ご主人様は受けられたのですか?」
アリーシェが商会の人間がいなくなったことを察したのか、杖をつきながら近づいてきた。
「ああ。一週間ほど留守にする。レイラと仲良くしているといい。そうだな、金貨で20ぐらいなら好きに使ってもいい」
「そ、そんな大金」
「別にうちは金に困ってるわけじゃないんだ、畏まるな。最近劇場で始まった喜劇が面白そうだとか言っていただろう」
俺は右耳のピアス、勇者の遺物を指で撫でた。
アリーシェは俺の横の椅子へと近寄ってきた。座る。
「けれど、それはご主人さまも一緒にご覧になると」
「ああ。そう思ってたけど、仕事だからな」
「でしたら、私もご主人さまが戻ってこられるまで待ちたいです」
「何で?」
アリーシェは拗ねるような表情を見せた。
この女はレイラと対照的に感情表現が豊かだ。
「私はご主人さまとレイラと一緒に、劇場へ行きたかったのです」
「そういうことか。なら、帰ってきてから一緒に行こう」
甘えるように顔を寄せてきたアリーシェが可愛らしかったので、その顔をよせてキスをする。
お互いの舌を絡めあう濃厚なディープキス。アリーシェの顔は下にあるので、俺の唾液が自然とアリーシェの口の中へと流れ込む。
ごくりっと唾液を喜んで飲み込みながら、アリーシェは俺の首に右腕をからめた。
残った左手を俺の股間へと伸ばす。
「あ、むっ……ご主人さま」
昨日あれだけ射精したにも関わらず、俺のモノは固さを取り戻していた。
アリーシェの絹のように柔らかな指先に、服の上から包まれ愛撫されるだけで、怒張しながらそそり立つ。
刺激されるたびに、びくびくと入るべき穴を求めて震えていた。
俺はアリーシェの細い体を持ち上げた。
素直にアリーシェは俺に体を預ける。貪欲にキスを続け、左手で俺の息子をこすり続けながら。
「一週間は家を空けるから、忘れられないように、たっぷり可愛がってやらないとな」
「そんなっ、ん、……私はもう、ご主人様だけのモノです。忘れるなんて」
「本当か?」
ベッドにまで到着した俺はアリーシェの体をそっと寝かせた。
キスしていた顔を離して、その衣服を脱がしていく。アリーシェは右足が上手く動かないために、俺がやった方が早いのだ。
アリーシェは恥ずかしそうに体をよじることで、服を脱がしやすいように動いた。
最後の一枚。下着まで足を持ち上げて抜き取る。
アリーシェの陰部を見れば既に濡れていた。
きれいに手入れのされた下腹部の陰毛が、愛液にぬめり官能的だった。
俺は自分の服を手早く脱いだ。
「どうした? いつもより興奮してるじゃないか。これなら前戯も必要ないな」
「……ご主人さま、最近は、レイラにばっかりご執心でしたから」
「別にそんな拘ってたわけじゃないんだけどな」
腰を引いて、怒張の狙いをアリーシェの陰部に絞る。
亀頭の先端を濡れた陰部に触れさせると、アリーシェは 「ん」と小さい声を上げた。
そのままずぶずぶと剛直をアリーシェの膣内へと挿入していく。
この女の中は、いつも柔らかくて蕩けてしまいそうだった。かなりの名器と言えるだろう。
障害さえなければ、レイラの倍以上の値がつけられたとしてもおかしくはない。
動かしやすいようにアリーシェの腰を掴んでから、俺はゆっくりと抽挿を開始した。ぐっと腰を押しだして、また引く。
その繰り返しを続けるだけで、快楽が前立腺に高まっていく。
「あ、はっ……は、あ」
対するアリーシェは、感じやすい体質であるらしく、普段は陶磁器のように白い頬を薔薇色に染め上げて耐えているようだった。
ベッドのシーツを両手でつかみ、子宮にまで剛直をぶつけるたびに、嬌声を上げる。
俺はそんなアリーシェの表情を眺めながら、ピストン運動に没頭した。
分泌された愛液が潤滑油となって、アリーシェの中に剛直を滑り込ませる。熱い膣の粘膜は吸いつくように絡みついて、俺の剛直をことごとく刺激した。
すでに先走りの汁が、膣の中でだだ漏れになっていることが感覚で分かった。
そしてやがて精嚢を震わせる興奮が、股の下から押し寄せてきた。
俺はその快楽を長時間味わうために、射精衝動を抑えながら正常位の体勢のアリーシェの口へと激しくキスをした。舌を歯の間に割り込ませる。歯茎をなぞる。
空いた手では柔らかに熟した胸を揉みしだき、スパートをかけるために激しく腰を前後させた。
体全身を使って女の体を堪能する。
アリーシェも俺が絶頂にさしかかっていることを理解したのか、これまでよりも刺激的に腰を使い始めた。
俺の抽送に合わせるように、腰を動かし、乱暴なキスにも従順に応える。
その様は一匹の雌でしかなく、例えようもなく官能的だった。
耐えきれなくなって、俺は玉袋の中身をすべて放出するような勢いで、アリーシェの膣内に射精した。
一度、二度、びくんびくんと精子を吐きだしてもなお足りず、射精を続ける。
何度も何度もマーキングするかのようにアリーシェの子宮を汚していく。
アリーシェは何度も続く俺の射精が終わるまで、ずっと膣に力を入れ続けていた。
そして剛直が精子を吐きだし終えてもなお、離そうとはしない。
それどころか硬度が失われようとしているモノに刺激を与え、もう一度勃起させようとしていた。
普段は大人しいアリーシェであったが、セックスをする際にはこのように積極的になることが多い。
まともに動けない体を持っているからこそ、せめて性交だけでは行動的になっているのだろうか。
あるいは前に子供が欲しいと言っていたが、そのせいかもしれない。
危険日も配慮せずに中出しを繰り返していた俺に、アリーシェは妊娠してしまうかもしれないと言った。
俺は、なら育ててやるから産めと言ったのだが、その後から妙に膣内の射精に拘っているような気もする。
精飲させる嗜好もある俺としては、少し困ったことなのだ。
まあ今は代わりにレイラが毎日でも口内射精をやってくれているので問題はないが。子供もできたらできたで構いはしない。
金なら湯水のようにあるのだから。
「ご主人さま、ご満足いただけましたか?」
「……ああ。お前の中はいつも落ち着くよ」
いつの間にか額に汗を浮かべ、頬を上気させたアリーシェは妖しく微笑んだ。
まだその陰部は、俺の男根を咥えこんで離さない。
上からのしかかっている俺の乳首を、その舌先で転ばしながら、アリーシェはリズミカルに腰を収縮させた。
ぞくりとする刺激が加わって、俺の剛直は再び固さを取り戻しつつあった。
そして一度固さを取り戻したことが解れば、アリーシェはさらに熱を入れて膣内を動かした。
あれだけ入念に射精させたというのに、精液で汚れているだろう子宮へと、もう一度子種を欲して腰を動かす。
「何だ。そんなに子供が欲しいのか?」
「はい、私っ、ご主人様の赤ちゃん、欲しいですから」
「まったく」
呆れたように答えたが、ここまで正直に子供が欲しいと言われて悪い気になる雄などいない。
少なくとも俺は目の前の女を妊娠させるというシチュエーションには、ただのセックスとは違う興奮を覚えた。
気がつけば萎えていたはずのペニスが復活している。
目の前の女を孕ませようと、下腹部に異様な熱が滾っていた。
俺はアリーシェの胸に優しく噛みついた。その乳首を甘噛みしながら、舌でつつく。さっきのお返しだった。
今度はアリーシェの敏感な部分を狙って攻め立てていく。
「ならちゃんと、妊娠できるように続けないとな」
「は、はい、お願ひっ、しますっ」
そのまま俺は第二戦へともつれこんだ。
攻めに変わった俺は結局、レイラが家に帰宅するまでに三度、アリーシェを失神させることに成功したのだった。
- 2008/01/14(月) 21:36:18|
- 異世界召喚ハーレム
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